アジャイル開発は重厚長大な開発手法のアンチテーゼとして生まれた手法の総称で、その歴史は1990年代初頭まで遡ります。現在はソフトウェアを含めたサービス開発全体の投資対効果を最大化する方法として、国内でも普及が進んでいます。

アジャイルが投資対効果を最大化する方法として期待されている理由は、現代の市場環境とアジャイル開発の目的にあります。
これまでの開発手法はソフトウェアを計画通りに完成させることを目的にプロセスが設計されています。そのうえで開発リソースの効率性を追求するため、サービスのビジネス価値(ここでは売上やコスト削減効果など)を事前に正しく予測することができれば、非常に投資対効果の高い手法となります。しかし逆に、ビジネス価値の予測を見誤た場合は投資対効果が低くなります。現代のビジネス環境はユーザーのニーズが掴みにくく、変化も激しくなっています。そのようなビジネス環境においてビジネス価値を事前に正しく予測することは困難なため、これまでの開発手法で高い投資対効果を得ることが難しくなっています。

アジャイル開発はより価値の高いサービスを作ることを目的にプロセスが設計されています。開発の領域を超えてビジネスの目線でプロセスが設計されています。サービスのビジネス価値はサービスがユーザーのもとにリリースされた際に初めて分かりますから、リリースまでの早さ追求します。そしてビジネス価値が向上するようにサービスの要件を見直しながら開発・リリースを繰り返し、サービスの完成度を高めていきます。作りかえが発生するため、ソフトウェアの規模に対する生産性は従来の開発手法よりも劣ります。しかし現代のビジネス環境においてビジネス価値を事前に正しく予測することがますます困難になっているため、比較をするとアジャイルのプロセスの方が投資対効果を高めやすいと認識されています。

私たちはアジャイルがエンジニアも企業も豊かにするアプローチと考えていますが、その理由及びアジャイルのメリットは立場によって異なります。ここでは立場ごとにアジャイルのメリットを掲載致します。

ユーザー企業にとってのメリット

ここでのユーザー企業はソフトウェアを含めたサービスによって収益を上げる企業と定義します。
ユーザー企業にとってサービスの投資対効果の向上がそのまま収益の向上につながるため、アジャイルを導入するメリットがあります。

システムインテグレーターにとってのメリット

システムインテグレーターはソフトウェアの規模が売上につながるため、一見するとアジャイルにメリットが無いように感じます。しかしアジャイルは市場の変化に応じて機敏にサービスを作り替えていく手法のため、顧客のIT投資を継続的に引き出すことができ、ソフトウェアライフサイクル全体で見るとメリットがあると考えます。
また、アジャイルの反復的な開発プロセスは潜在する技術的な問題・課題を早期に炙り出すことができるため、仕様の確定を前提として請負開発に適用することで、開発原価を下げる効果を期待できます。

エンジニアにとってのメリット

アジャイルのエンジニアはソフトウェア開発の工程、領域を広くカバーできるスキルが求められます。スキルアップの大変さはありますが、従来の分業的な開発現場に比べると個人のスキルを高めやすい環境となり、スキルアップ、キャリアアップに積極的なエンジニアにとってメリットが大きいです。